2026/03/25 18:01
こんばんは。
会社法・商法第6問 募集株式の発行等①
1 総 評
本問は、募集株式の発行等について、会社法の条文の内容を問う問題です。
本問においてポイントとなるのは、肢ア、肢イ及び肢オです。募集株式の発行等に関する問題は、近年の本試験では、令和2年第28問においてメインテーマとして出題されています。募集株式の発行等については、かつては頻出事項であったと記憶していますが、近年は、その出題頻度が下がっています。しかし、商業登記法では頻出の上、記述式の問題の題材となることが非常に多いです。また、募集株式の発行等の考え方は、組織再編における対価としての株式の割当てにも通ずるところがあり、司法書士試験においては、依然として重要な項目であると言えます。そして、午前の部の会社法では、午後の部の商業登記法においてあまりでてこない事項についても問われることがありますから、当該事項も含めて、しっかりと押さえておきましょう。
2 各肢の簡単な講評等
ア 自己株式の処分は、募集株式の発行の手続によって行うことができます(会社199条1項柱書)。もっとも、自己株式の処分のみでは、会社の資本金の額は増加しません。したがって、この場合には、募集事項の決定に当たり、資本金及び資本準備金に関する事項を定める必要はありません(会社199条1項5号)。なお、募集株式の発行を新株と自己株式を混在して割り当てる方法によって行う場合には、自己株式処分差損に注意が必要です。
イ まず、基礎事項についておさらいしておきましょう。会社法上の公開会社とは、その発行する全部又は一部の株式について譲渡制限の定めを定款で設けていない株式会社をいいます(会社2条5号)。したがって、種類株式発行会社であれば、公開会社であっても、募集株式の目的が譲渡制限株式であることも当然にあり得ますから、入門者の方は特に注意しましょう。そして、この場合、株主の最大の関心事である持株比率の維持を図るため、譲渡制限株式を有する株主による種類株主総会の特別決議が必要となります。
ウ 少し細かい知識になります。募集株式の発行に際しては、募集株式の払込金額又はその算定方法をその募集事項として定めなければならないのが原則です(会社199条1項2号)。もっとも、会社法上の公開会社であって、かつ、募集株式が市場価格のある株式である場合には、これらに代えて公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額を定めることができるものとされています。一般には、引受人である証券会社が機関投資家(個人投資家から資金を集めてこれを投資に運用する団体)に対する需要状況調査を行った上で払込金額を決定する方法(ブック・ビルディング方式)が広く用いられているようです(田中・会社法〔第5版〕p518)。あまり気にしなくても大丈夫です。
エ 平成26年の会社法の改正により設けられた新しい条文です。定款又は株主総会の決議に従い、取締役に報酬として募集株式の割当てをする場合には、これと引換えにする金銭等の払込又は給付を要しないものとすることができます。もっとも、当該事項を定めることができるのは、上場会社に限られています。なぜなら、上場会社でない場合には、株式に市場価格が存在しないため、株式の公正な価値の算定が困難であり、このような募集株式の発行等を許容すれば、大量の株式を取締役に割り当てることによって不当な経営支配を助長することが考えられるからです。
オ 会社による株式の割当自由の原則を定めた条文です。ただ、注意してほしいのは、募集株式の発行等が株主割当ての方法による場合には、割当自由の原則は妥当せず、その持株比率に応じた割当てをしなければならないことです。
以上です。おつかれさまでした。
